<データで見る事業承継の現状事業>承継は財務等にどれだけ影響するのか?

前回に引き続きまして、事業承継について現状をお話したいと思います。今回は2019年版の中小企業白書から、事業承継が財務会計上、どれだけ影響を与えるのかについて解説致します。
まずは、事業承継と売上高の関係を見ていきましょう。
第 2-1-23 図は、事業承継した企業の売上高成長率を比較したものです(左側の数字は成長パーセントです)。2009-2011年で事業承継した段階で承継の翌年から5年後までの間、成長率が高い傾向が確認されました。また、事業承継年から年が経つにつれて差が拡大しているため、事業承継後に売上高が成長することが多いと考えられます。
また、承継後の新経営者の年代別の効果を比較すると、事業を引き継いだ経営者が30代以下、40代の場合、事業承継の翌年から5年後までの間、売上高成長率を押し上げる効果が顕著であることがわかりました(第 2-1-24 図)。
しかし、50代への事業承継になると、事業承継から2年後、3年後を除き、有意な効果が確認できませんでした。
次に総資産についてのデータを見ていきましょう。
第 2-1-25 図によると、2010年度に事業承継した企業は承継後全ての年で、2009年度、2011年度に事業承継した企業も5年中3年で、事業承継していない企業の総資産成長率を有意に上回っており、総資産成長率についても事業承継後によりおおむね上昇すると考えられます。
新経営者の年代別に見ると、30代以下への事業承継では承継の翌年から成長率を押し上げる効果が明確に観察されており、ほとんど効果が確認できない40代、50代への事業承継とは対照的な結果となっています(第 2-1-26 図)。
ROAについてのデータも確認してみましょう。
ROAとは「総資産営業利益率」のことで、総資産からどれだけ営業利益を生み出したかの割合を計算したものです。
第 2-1-27 図によるとROAに関しては、事業承継を行った企業と行っていない企業の間に有らかな差が見られることは少ないようです。
また、新経営者の年代別の効果を見ても、若い世代ほど、事業承継していない企業に対してROAが高くなるという傾向は観察されませんでした(第 2-1-28 図)。
全般的に利益に関しては、相関関係は見られないようです。
最後に、従業員数成長率を比較しましょう。
第 2-1-29 図によると、2009年度と2010年度に事業承継した企業について、従業員数成長率が伸びるケースはありませんでした。しかし、2011年度に事業承継した企業については、事業承継から4年後以降、従業員成長率を伸ばしています。
また、新経営者の年代別効果を見ても、30代以下、40代への事業承継では、明らかに従業員数の成長率を押し上げる一定の効果が見られました(第 2-1-30 図)。
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